これは私が
《結婚相談所》に勤務していた頃に体験した、本当に起こった会員様同士のトラブルです。
エピソード:1
私はいつものように資料請求されてきた方々に、資料の郵送準備をしていました。その中の秀介さんは関東から少し離れた長野からの資料請求でした。サンプルを送付する前に、ご本人のお相手に対しての要望を伺おうと電話を入れましたところ、
「今から東京の方に用事があるから、そっちに行くよ」
そうおっしゃられ、電話は切れました。どれ位かかるか分からないので、秀介さんが来社する時間のことは気にせずにいました。それから、わずか二時間後。秀介さんがセンターにいらっしゃいました。外見はカジュアルでポロシャツにデニムのパンツ。普通にどこにでもいる30代の男性でした。話していても多少早口ではありますが、矛盾したところもなかったので入会手続きをしました。入会金支払いになり、秀介さんは近くの銀行に引き出しに言ってくるというので、玄関まで見送りセンターで待機していました。20分、30分経っても戻って来ないのです。携帯に電話を入れると、急遽長野に戻らなきゃならなくなったとのこと。違和感もなかったので、信じて振込み方法を教えました。けれど、秀介さんからは振込みはされませんでした。
時々、支払いの時点で気が変わり、入会を取りやめる方もいらっしゃるので、秀介さんもそのくちかなと思い保留にしておきました。
一週間後、秀介さんがなんの前触れもなく来社されました。裸足です…
「用があって北海道行ってたんだ〜。千歳空港はジュータン張りだったから、ここもジュータンでしょ?」
ちとおかしい??
「お金、車のトランクに入ってるから、持って来るね」
そう言ってセンターを出て行き、またしても戻ってきませんでした。
こりゃ様子が変だと思い、秀介さんの自宅に電話をすると、秀介さんのお母様が出て、
「みんな秀介に振り回されて困ってるんだよ。もう、関わらないで欲しい。」
ああ、そうだったのか。
話している分には、なんの障害もないように感じたのですが、実は精神的に欠落部分があったようです。支払いも滞りなく済んでいたら、入会できてしまったことになるので、考えると怖い話だったと思います。
エピソード:2
私が俊夫さんに初めてお会いしたのは、俊夫さんが資料請求した後、なんの連絡もなく突然センターに訪れて来た時でした。体つきは小柄でしたが、身に付けているものは品が良いブランド物ばかりでした。お話をしていくうち、某貿易会社の代表取締役であることが分かりました。私はそれとなく特別会員様としての入会を勧めましたが、俊夫さんはご自分が前妻と死別していることもあり、量より質でゆっくり探したいとお申し出されました。結局、その日は入会されずにお帰りになりました。
一週間位経ったある日、またしても連絡なしに俊夫さんがセンターに現れました。今度は入会する手続きのために。初回来社した時に、公開出来る会員様のプロフィールをお持ち帰りになり、是非会ってみたいと思われた方がいらっしゃったそうです。会いたいと言っても、入会し、正規の交際申込みをしていただかないと会えないのがシステム。俊夫さんはそのことをよく理解されていらっしゃったので、だだをこねるわけでもなく、入会手続きをされました。
最初に選ばれた方とはうまくお付き合いを始めることは出来ませんでしたが、品があり、センスの良い俊夫さんは女性会員様からのうけもよく、何人かの方とデートをされていたそうです。交際が始まって、ご本人様からのお申し出がない限り、担当者からお伺いはしないことになっておりましたので、立場ある俊夫さんのことですから、安心して私からは特に連絡をしておりませんでした。
それなので、突然のクレームの電話に私は驚かされてしまいました。
とある女性会員様の担当者からでした。
「ちょっと!俊夫さんって一体何考えてんの!」
言葉を失っている私に追い討ちを掛け、
「私の会員さんNさんが俊夫さんにレイプされそうになったって言っているのよ!」
慌てて俊夫さんに電話を入れました。事の真相を聞き出そうと思ったのです。
当の俊夫さんは私からの電話に
「やあ、お変わりありませんか?」
なんて暢気に応えているので、極力私も平静を装い冷静に尋ねました。話を聞いた俊夫さんは声質が変わり、声のトーンも低くなりました。
「レイプではなく、大人の愛情表現であり、確かにことを早急に運び過ぎたのかもしれないが、同意してのことである。そういう言い方をされて心外だ」
ガチャンと電話を切られ、逆に私が怒られてしまったのです。
今度はNさんからの事情聴取です。
私はNさんの担当者を通さず、直接Nさんに電話を入れました。担当者によってはうるさく注意してきますが、腑に落ちない話なので直接聞きたかったのです。
案の定、Nさんの狂言的脚色。色んな方とデートをしている俊夫さんに、自分ひとりに決めて欲しかったそうです。分からなくもない女心ですが、変な小細工しないで思いのままを俊夫さんに伝えれば良かっただけなのに、こんなことになってしまい、俊夫さんの心は二度とNさんに向けられることはありませんでした。
私からもお詫びの電話を入れましたが、俊夫さんはご自分を恥じ軽はずみな行動を反省されていました。俊夫さんが謙虚な方だったのでこじれずに済みましたが、品のない方だったら、泥試合になっていたでしょう。
エピソード:3
はじめに、良夫さんが幸枝さんに交際を申し込みました。電話で2、3度話してみたところなかなかの好印象を受けた幸枝さん。一度会ってみると、趣味も共通したこともあり、早速交際をスタートすることに。
デートを何度か繰り返していた時、以前、幸枝さんが交際を申し込み、断られた隆さんから連絡が!うれしくなった幸枝さんはそうそうにデートの約束をし、隆さんとの交際を始めてしまったのです。
数ヶ月経つと、幸枝さんの様子がなんとなくおかしく感じ、良夫さんが問いただしてみました。幸枝さんは隆さんのことは言わずに、一方的に交際を断りました。良夫さんからアクセサリーをプレゼントされていましたが、返す必要もないだろうと返しませんでした。
隆さんと幸枝さんの交際は順調に進み、ある日のデートの帰り、隆さんが幸枝さんを自宅のマンションまで送り届け、二人は別れました。幸枝さんが部屋に入り、電気を点けたと同時に、電話のベルが。
「今、一緒にいたのは誰?」
良夫さんでした。幸枝さんのマンションの下で待ち伏せしていたのです。
幸枝さんは怖くなり、何も応えずに電話を切ってしまいました。すると、立て続けに電話が鳴りました。留守電に切り替わると切れ、再び電話のベルが。それは何度も繰り返されます。幸枝さんは気味悪く感じ、携帯で隆さんに電話を掛けようとしたその時、
ピンポーン。
今度はチャイムが鳴ったのです。
「いるのはわかってんだぞ!出て来い!」怒声が聞こえます。ガンガンガンガン!ドアを叩く音が何度も何度も。
「早く出て来い!」ドアを蹴り破るのではないかと、幸枝さんはもう怖くて仕方ありません。あんなに優しかった彼が…。
怖々玄関の方へ行こうとしたその時!
シャーーーー!
なんと郵便受けの隙間から、消火器のノズルを入れ、噴射したのです!
部屋の中は真っ白。そのまま良夫さんは逃走。幸枝さんは警察に通報しようかと悩みましたが、自分に非があるため思い留めました。
後日、幸枝さんから報告を受け、担当者が良夫さんを問い詰めたところ、良夫さんは幸枝さんに復縁を申し出に行ったのだそうです。純粋に幸枝さんのことを忘れられずに。
その後、良夫さんは会から厳重注意を受け、潔く退会していきました。
独り言
この3件のエピソードはごくごく一部のことです。もっといっぱいいっぱい笑える話から怖〜い話がたくさんあります。結婚相談所を辞め、印象に残っていたものを今回はピックアップしてみました。実際には、会員数を増やすと自分の営業成績につながるので、ちと?という人も入会させてしまう担当者もいます。入会させ、入会金を支払った後、その人を休会扱いにしてしまい、封印してしまうのです。休会期間は半年で、再開申請をしないと退会とみなされてしまいます。本人は活動しているつもりなのに、お相手からはなんの返事もないんだと思い、半年経って自動的に辞めさせられてしまう—という。ほとんど詐欺ですよね?私のいたセンターにはこんな担当者はいませんでしたが、他店には結構いたようです。